由布院温泉で五感やすらぐ人と住まいの原型にふれる

大きな温泉街が凋落の一途をたどる中、小さいけど町ぐるみで元気な温泉街が由布院です。

由布院を訪れる方の7割が女性で、6割はリピーターです。

周囲は山と農地ですが、由布院には一口では語れない魅力があちこちに詰まっています。

山荘無量塔
雑木林に抱かれた隠れ宿の「さりげない上質」に心放つ

麓の賑わいを背に、由布岳を目指し山裾を登っていきます。

道は木々に包まれるようにたたずむ「山荘無量塔」で終わります。

この辺り一帯は、もともと何もないスギ山でした。

それを切り拓き、少しずつ植林をして今の雑木林は作られました。

10年の歳月をかけて、今やっとこの地になじんできました。

約3800坪の敷地内に足を踏み入れ、そっと耳をすまします。

葉擦れの音と鳥の声だけが聞こえてきます。

ずっと昔からそこに在ったかのような風格ある母屋や6棟8部屋ある離れ形式の客室は、新潟や滋賀の湖北から移築したものです。

この堂々たる佇まいにして、創業10余年の若い宿だと聞いた人は一様に新鮮な驚きをもって見入ることでしょう。

たとえば、明治初期の建物を客室に設した一戸「藤」を覗いてみると外観は和風の造りです。

しかし一歩足を踏み入れると、リビングにはイタリア製カッシーナのソファが置かれ、土間には李朝の家具があります。

 

奥には二間続きの和室(各8畳)があり、気に入った場所で羽を伸ばせます。

さらにベッドルームと奥には緑を望む内湯という具合に、和と洋、今と昔が不思議な統一感を持って迎えてくれます。

また、各部屋にマスターキーは存在しません。

チェックイン時に鍵を渡されたら、その後、スタッフが断りなく客室に入ることはありません。

完璧に自分のプライベートスペースとして寛げるのです。

なにもしないこともサービスのひとつです。

訪れる人のすべてが楽しい気分で行くのではなく、哀しい思いで行く人もいるかもしれません。

人の胸の内はさまざまです。

「大切な時間だからこそ、一歩引く」これが山荘無量塔のモットーです。

爽やかな緊張感とともに、適度に放っておいてくれる心地よさに心を緩めてしまいます。

「折り目正しく出過ぎぬように」全ての設えやサービスにその思いが満ちています。

おやど二本の葦束
4000坪の敷地に9組 放ったらかしのおもてなし

由布院の街の中心部から少し離れた山麓に「おやど二本の葦束」は、山野草や樹木に囲まれた静寂のなかに佇んでいます。

約4000坪という広大な敷地に、離れ家、母屋、風呂、バーなどが点在しています。

宿そのものが一つの集落のような印象です。

自然と見事に溶け込んでいる母屋は築150年の農家の家を移築したものです。

客室はすべて離れ家で、築200年のケヤキ造りの家を移築した「我不歳月」、箱庭付き2階建ての「樹陰房」、茅葺き屋根の離れ「春隣庵」など、それぞれが趣向を凝らした造りです。

自慢の風呂は、桧風呂や露天風呂など7種類の風呂が24時間貸し切り利用できる温泉棟「昭和の湯どころ」、山道を上がった先にある大露天風呂「月宿る湯」、1~2人でのんびり楽しみたい「竹林風呂」と種類は豊富です。

宿泊客は大露天風呂を含め、すべて貸し切り利用ができます。

ここのもてなしの哲学は、”放っておく”ことです。

チェックインを済ませると、スタッフは客から呼ばれないかぎり部屋を訪れることはありません。

それもそのはず、室内は設備も装飾もほぼ万全です。

飾られた山野草は愛らしくアンティークの調度品もさりげなく置かれています。

敷かれた布団はマッサージ機能付き、外履きは草履と散策用のブーツです。

スタッフの顔は見えなくても細やかな心遣いが心を和ませます。

宿のどこに行っても、そにしつらえは万全です。

客は誰の目も気にせずに大いにそのもてなしを満喫すればいいのです。

宿泊客は1日限定9組のみです。

広大な敷地を独り占めしているような感覚で過ごしてもらうための配慮です。

満室の状態でも外で客同士が顔を合わせることは稀です。

しかし、客同士は顔を合わせると安心するので、食事だけは母屋の食事処に行くことになります。

旅先での人との交流もしっかりフォローされています。

ゆふいん七色の風
由布岳をひとり占めできる絶景露天風呂の宿

秀麗な山容から豊後富士とも呼ばれる由布岳(1584メートル)です。

そのすそ野に合掌造りをイメージした外観で目を引くのが「ゆふいん七色の風」です。

しかも地の利のおかげで、移ろいゆく四季がまず見どころとなっています。

「風薫る草原のホテル」と銘打っているだけに新緑のころは本当にキレイです。

なかでも雨の降った日は格別です。

街から離れているのでとにかく静かです。

あとはのんびり温泉に浸かるだけです。

目前に迫るがごとき由布岳を眺めながらの露天風呂は、この宿ならではの醍醐味です。

ひと風呂浴びたあとの料理も、地の食材、旬の食材を巧みに取り入れ、誠に丹精です。

阿蘇の雄大な自然、美味しい料理、眺めのいい温泉風呂。

この贅沢を公共の宿ならではのお手軽な料金で楽しめるのがうれしいです。

ほてい屋
湯煙ごしにのぞむ由布岳の絶景

ほてい屋は、茅葺きの農家あり蔵造りありと、趣、内装とも一棟ごとに異なる変化に富んだ造りの宿です。

木々を渡る風の音や、野鳥のさえずりの中で過ごすことができます。

姉妹館のいけすには、豊後水道で獲れたばかりの魚が毎日運ばれていて、新鮮な魚介類がいただけます。

露天風呂付部屋(3室)の他に、男、女別や貸し切りできる露天風呂があり、湯けむりと木立の向こうに由布岳を望むことができます。

緑あふれる湯の坪街道をそぞろ歩く

年間400万人近くもの人が訪れ、国内第3位の湧出量を誇る温泉地が由布院です。

かつてはひなびた湯治場にすぎませんでしたが、いまや九州を代表する観光地になりました。

町の様相を手っ取り早く把握するには「スカーボロ」に乗ります。

町の華やぎマッチしたイギリス製のクラシックカーです。

由布院盆地の中はどこを掘っても温泉が出てきますが、硫黄分がない単純泉なので、湯けむりが上がりません。

”らしくない”温泉地は、一旦街中を離れると田畑が広がり、農業にも依存しているのがよくわかります。

一方でここは、美術館の町でもあります。

由布院駅にもアートホールがあるくらいですので、小さなギャラリーも含めると、その数は25館にも上ります。

個性的な美術館が点在しています。

一口では語れない魅力が、町のあちこちに詰まっています。

由布院美術館
放浪の詩人画家を展示する由布院のヘソにある美術館

由布院盆地のほぼ中心に位置する個人美術館です。

この地で没した放浪の詩人画家・佐藤渓の絵画や詩など約800点を常設展示しています。

体験するアート風呂「あし湯」も面白いです。

ギャラリーあり
個性的な作家のオブジェを紹介する森のギャラリー

別荘が多い閑静な鳥越地区は、一方で小粋なアートの店やギャラリーが点在しています。

ここも陶器やガラス細工など、手仕事にこだわった作家の個展をメインにしたギャラリーです。

由布院民藝村
匠の技にふれながら九州の伝統文化を知る

明治時代の酒蔵など、九州各地の古い建物が移築・復元されています。

制作風景が見学できるレンガ造りのガラス工房や染め工房、鍛冶屋、庄屋造りの民芸茶房などが軒を連ねています。

朱竹堂
夏向きの各種竹細工で涼感を演出

大分県は良質なマダケの産地のため竹細工が盛んです。

朱竹堂では別府の作家の作品を中心に販売されています。

竹の箸やスプーンの小物から花籠やバッグまで涼しげな品々が揃っています。

六所宮
「うなく姫」伝説が残る地域に親しまれる

六所宮は「六所様」と呼ばれ地元の人に親しまれている神社です。

由布岳を御神体とした山霊神と、この地を支配した種族の霊を祀ったものとされています。

境内には樹齢100年の杉の大木が居並びます。

下ん湯
湯所由布院一の公衆浴場

茅葺の屋根の公共の湯(料金200円)。

目の前の川は洗濯場とよばれ、古くから地元の人々に利用されてきました。

混浴です。

湯布院醤油屋本店
日田杉の香りにつつまれたカボス醤油で知られる名店

古来伝統製法で造られた風味豊かな醤油、味噌、漬物などのオリジナル商品が並んでいます。

保存料などを使わず、カボス果汁を70%まで使ったカボス醤油が人気です。

はかり屋
オリジナル地酒を中心に約250種類の酒がそろう

由布院駅から湯の坪をゆっくりと15分ほど歩くと、明治創業の趣ある老舗酒店にぶつかります。

人気は「ほなり」という純米酒です。

まとめ

山と農地に囲まれた温泉街の由布院は、女性の人気ナンバー1の温泉街にまでなりました。

お洒落な店も多く、華やかな中にも落ち着いた雰囲気が人気です。

ただ、本当の由布院の魅力は地元の方々の生活の中に、人と住まいの原型を見出すことができるからではないでしょうか。

洗練されているようで、素朴な自然の残る由布院へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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